現在のペットの登録件数2657

海の小さな職人 ゴカイが教えてくれる驚きのものづくり

🪱ゴカイが教えてくれた、“自然界の3Dプリンター”という発想

「ゴカイ」と聞くと、釣りのエサや海の底をくねくね動く細長い生きものを思い浮かべる方が多いかもしれません。
見た目は地味ですが、実はこの小さな生きものが“自然界の3Dプリンター”のようなすごい能力を持っていることがわかってきました。

🧬たった1つの細胞が毛を作る

ウィーン大学の研究チームが調べたのは「イソツルヒゲゴカイ」。
電子顕微鏡で観察すると、毛の根元には「ケトブラスト」というわずか1つの細胞があり、この細胞がノズルのように伸び縮みしながら毛を1本ずつ作っていました。

材料はカニやエビにも含まれる軽くて丈夫な「キチン」。
ゴカイは体内にミクロの製造装置を備えている存在だということです。

🌱再生のチカラと人間との共通点

研究を率いたライブル氏によると、ゴカイは再生能力が非常に高い生きもの。
さらに、毛をつくる細胞の構造が、人間の内耳の感覚細胞とよく似ていることも判明しました。

進化的に遠いにもかかわらず似た仕組みを持つこの発見は、難聴治療や再生医療の研究にもつながる可能性があります。

🦷毛だけじゃない、歯まで“プリント”

池田京二郎博士らのチームは、ゴカイが毛だけでなく歯まで同じ仕組みで作っていることを突き止めました。

新しい歯は30〜40分ごとに作られ、古い歯が完成する前に次の歯の生成が始まる——まるで止まらないベルトコンベアーのような生産ラインです。

🧪ゴカイの研究が未来の医療に役立つかも

毛や歯の材料となる「キチン」は人体との相性が良く、研究チームはこの仕組みを応用して、体に吸収される縫合糸や歯科治療素材の開発を進めています。

見た目は地味でも、ゴカイが未来の医療を支える鍵になるかもしれません。

🌊5億年続く“自然のものづくり技術”

ゴカイを含むぜん虫類は、約5億年前から地球に存在している古い生きもの。
木が生えるより前の時代から海底で生き続け、長い歴史の中で洗練された技術を今も使っています。

私たちが“最先端”だと思っている技術の多くは、自然界ではすでに完成されているのかもしれません。